アスリートインタビュー

リオパラリンピック陸上競技銅メダリスト
多川知希選手

リオパラリンピック銅メダリストの多川知希選手

多川 知希Tomoki Tagawa

1986/2/6生、神奈川県横浜市出身、右上肢機能障害

戦歴

  • ロンドン2012 パラリンピック
    陸上競技男子100m 5位、4×100mリレー 4位
  • インチョン2014 アジアパラ競技大会
    陸上競技男子100m 銅メダル、200m 銅メダル
  • リオ2016 パラリンピック
    陸上競技男子4×100mリレー 銅メダル

第2回
ボランティアとの触れ合いで感じた、2020年への期待と課題

ロンドン2012大会での日本人ボランティアとの出会い

––– 多川選手はこれまでパラリンピックに3回出場されていますが、ボランティアとの関わりで印象に残っていることはありますか?

以前に関わりのあるボランティアについて語る多川選手

ロンドン大会では選手村の中にカフェやオープンスペースがあったのですが、そこに日本人の女性ボランティアの方がいました。親の都合でロンドンに住んでいて、ちょうど大会があったのでボランティアに申し込んだそうです。大会期間中は1カ月ぐらい海外で過ごすことになります。何気ない会話であっても、日本語で話すことができて、すごくリラックスできましたね。パラリンピックが終わった後も、海外遠征でロンドンに行ったときには現地を案内してもらったり、付き合いが続いています。

––– オリンピックとパラリンピックでは、ボランティアの方のサポートに違いはあるのでしょうか?

基本的には変わらないと思います。パラリンピックに出るような選手は自分で何でもできる方が多いからです。また、介助が必要な場合は、そのためのスタッフを連れてこなければいけなくなっています。例えば、目が見えない選手を1人で送り出して、現地のスタッフに任せるということはできません。

––– 東京2020大会でも多くのボランティアを募集する予定です。多川さんがボランティアの方に求めることがあれば教えてください。

東京2020大会で活躍するボランティアに求めることを語る多川選手

日本は外国人を受け入れるためのハード面はすごく充実していると思います。日本で生活していて、海外で感じるストレス——シャワーのお湯の出が悪い、トイレが詰まる——など、そうしたストレスを感じることがほとんどありません。だからこそ、重要になるのはソフト面、つまり「人」だと思います。

––– 2020年ではどんなところが課題になってくると思いますか。

海外では目が見えない方や、足が不自由な方が電車に乗ってきたら、すぐに気づいて席を譲ろうとする光景を目にします。でも、日本人はそうした意識がちょっと低いように感じます。ただ、それは日本人が意地悪というわけではなく、どうしていいか分からないというのも大きいのかもしれません。

––– 東京2020大会で日本にやってくるお客さんの中には、何かしらのサポートが必要な人もいると思います。

だからこそ、外国の方が来たときに、「日本人は障がい者に冷たい国」だと思われてしまうのはすごくもったいない。日本人の良さである「おもてなし」を外国の人にも感じてほしいですし、そのためには障がい者に対する知識をもっと深めていってほしいなと思います。

ボランティアとして関わりたい人へのアドバイス

––– ボランティアには、競技会場や選手村などで活動し、大会運営に直接関わる「大会ボランティア」と、空港・主要駅・観光スポットなどで、オリンピック・パラリンピックを観に来る人をサポートする「都市ボランティア」の2種類があります。多川さんが主に接していたのは大会ボランティアだと思いますが、街に出かけたときに都市ボランティアの方と接することはありましたか?

リオはあまり外に出られなかったのですが、ロンドンは選手村のすぐ隣が駅だったんです。そこにはボランティアのウェアを着ている方がいたことを覚えています。

––– 東京2020大会にボランティアとして関わりたいと思っている方に、今から準備しておくと良さそうなことがあれば教えていただけますか。

私自身はあまり得意ではないのですが……やはり語学力でしょうか。ジェスチャーだけで通じることもありますが、より密なコミュニケーションをとるためには、言葉は重要だと思います。

––– それは「外国人」としてパラリンピックに参加して感じたことでもありますか?

はい。本当はこうしてもらいたいけど、こちらもうまく言えないし、あちらも何を言っているかわからなかったり……。コミュニケーションが密にとれるようになると、ボランティアの価値はすごく上がると思います。ロンドンの時は日本人ボランティアの方がいて、日本語でコミュニケーションがとれたことで、すごく助けられました。

––– 多川選手の今後の目標を教えてください。

今後の抱負について語る多川選手

ようやくメディアに特集されることも増えてきましたが、パラスポーツはまだ認知度が十分ではありません。もっと多くの人に興味を持ってもらえるように頑張りたいです。また、小学校で講演をさせていただいたとき、私が話をしたことで手に障がいのある子への意識が変わったり、仲間に溶け込みやすくなったりしたという話を聞きました。「障がいがあっても活躍できる」「私もスポーツにチャレンジしたい」というメッセージを発信していきたいですね。

––– 2020年はパラスポーツにとっても大きなチャンスになりますね。

今はまだパラスポーツへの関心は「障がいがある人が頑張っている」という域を出ていないように感じます。だけど、それは誤解を恐れずに言えばパラスポーツのレベルが発展途上にあるから。もしも、100mをオリンピック並みのタイムで走るパラリンピック選手がいたら? みんな見に行きたいと思うし、メディアも「障がいがある人が頑張っている」という取り上げ方はしないはず。我々パラアスリートが頑張って、レベルを高めて、スポーツとしてみてもらえるようにしたい。それが大きな目標です。