ボランティア体験記

ボランティア経験者にインタビュー

オリンピックボランティアを経験した市居愛さん(左)と新条正恵さん(右)
市居愛

市居 愛Ai Ichii

シドニー・アテネオリンピック ボランティア

大学院在学中にボランティアとしてシドニーオリンピックに参加。ビーチバレーボールの来場者案内業務に従事。2004年のアテネオリンピックにも参加し、フォトサービス業務、アテネパラリンピックでは会場案内業務を行った。

新条正恵

新条 正恵Masae Shinjo

リオオリンピック ボランティア

海外での生活や外資系企業での業務経験を活かし、英語だけでなく8ヶ国語を習得。現在は社会人向けの語学学習コミュニティを立ち上げ、運営している。オリンピックボランティアは今回のリオが初めて。さくらジャパンやセブンズジャパンなどの通訳業務を担当した。

第1回
ボランティアで非日常空間の当事者になれる!

––– 今日はオリンピックにボランティアとして参加したお二人に、当時の体験を語っていただきたいと思います。まず、お二人がボランティアに申し込むきっかけは何だったのでしょうか。

シドニーオリンピックのボランティア体験を語る市居愛さん

市居 :私はシドニー(2000年)とアテネ(2004年)に参加しました。シドニーのときはアメリカの大学院で勉強をしていたんですが、インターンシップで就労体験をする必要がありました。そのタイミングでシドニーオリンピックがあったので、就労体験としてオリンピックのボランティアをさせてもらえませんか、と教授に掛け合ったんですね。元々、フィギュアスケートの伊藤みどりさんが大好きで、学生時代にすごく励まされた思い出があって、オリンピックにはいつか行ってみたいという憧れがありました。

リオオリンピックのボランティア体験を語る新条正恵さん

新条 :私は語学教室を運営しているのですが、昨年ぐらいから「東京オリンピックでボランティアをしたいから」という理由で通ってくる方が増えたんですね。それで、どれぐらいの語学力が必要かなというのがわからなかったんです。今年の2月に市居さんと知り合って、オリンピックのボランティアをされたということだったので、4月にお食事に行きました。そこで市居さんと話したら「ボランティア楽しいから、リオオリンピックに行きましょうよ!」と誘われて。

––– 今年の4月というと、開幕4カ月前ですよね? そんな直前でもボランティアの申し込みはしていたんですか?

新条 :正式な申し込みは2年前ぐらいに締め切っていたんですけど、市居さんに聞いたらギリギリでも大丈夫だよと言われたんです。それで、市居さんと話をしたその日に申し込みフォームに登録しました。

市居 :大会によっても違いはあると思うのですが、私が参加したときもボランティアの受け付けはギリギリまでやっていたので、今回もきっとそうなるだろうと思ったんです。最終的には私は行くことができなかったのですが(笑)。

––– 市居さんが新条さんに熱く語った「ボランティアの楽しさ」とはどんなものだったんでしょうか?

市居 :一言でいえば“非日常空間”ですよね。学校に通ったり、仕事をしたりしている中では味わえない経験ができることが、オリンピックの楽しさだと思います。1カ月間、ずっとお祭りをやっているような、そんな空間に当事者の1人としていられるのは、ものすごく刺激的な経験でした。

新条 :リオ大会では、複数の競技が行われるオリンピックパークがあったのですが、本当にテーマパークみたいなんですね。ショーを見せるエンターテイナーとして選手がいて、パークにいるスタッフとしてボランティアがいて、世界中からメディアやお客さんが来ていて……。

––– 市居さんはボランティアではどのような業務を担当されていたんですか。

アテネオリンピックでボランティアをしていた時の市居愛さん
アテネオリンピック当時のお写真   写真提供:市居愛
アテネオリンピックで着用したアクレディテーションと一緒に写る市居愛さん
アテネオリンピック当時のお写真   写真提供:市居愛

市居 :シドニーではビーチバレーの会場案内を担当しました。チケットのもぎり、観客の手荷物チェック、座席案内、競技会場等における関係者の通行証チェック、それからビーチバレーでは試合前にウェーブなどをして観客を盛り上げるのもボランティアの仕事でした。

––– ボランティアの仕事というのは、そんなに多岐にわたるんですね。

新条 :私も驚いたんですけど、オリンピックのスタッフの8割以上がボランティアらしいんです。リオオリンピックで、いろいろな担当の方と話をしてみると、ほとんどがボランティアで、オリンピックはボランティアがいないと成り立たないと。

––– 新条さんはリオオリンピックではどんなお仕事を担当されたんですか?

桑水流選手へのインタビューを通訳している新条正恵さん
セブンズジャパン桑水流選手へのインタビューの様子   写真提供:新条正恵

新条 :私は語学ボランティアとして、主に通訳業務などを担当しました。ボランティア通訳が仕事をするのは主に、「ミックスゾーン」と呼ばれる試合場所とロッカールームをつなぐエリアです。ここでメデイアから取材を受けた選手の言葉を通訳します。私はさくらジャパン(ホッケー女子日本代表)やセブンズジャパン(7人制ラグビー日本代表)を担当しました。

––– 通訳には特別なスキルや経験を必要とするポジションというイメージがあります。

新条 :オリンピックには有償のプロ通訳もいて、彼らは記者会見など公の場や、あるいは病院などで同時通訳業務を行います。ボランティア通訳は大会前に研修プログラムを受けて、通訳のテクニックなどを学びます。そのとき、他の参加者の人に聞いたのですが、15人中、通訳として働いていたのは1人だけでしたね。私自身も語学講師という仕事はしていますが、通訳経験はそれほどなかったので、不安はありましたね。もちろん、それぞれに語学はできるのですが、特別なスキルや経験はそこまで重視されていなかったと感じました。

市居 :観客案内のお仕事では、それほどの英語力がなくても大丈夫です。大事なのはコミュニケーション能力だと思うんです。困ってるんじゃないかなと察知したり、しゃべるときに笑顔だったり、そういう心遣いができる人のほうが円滑にチームワークがとれると思います。英語が苦手であっても、チームの一員として働ける人が求められていると感じました。

––– 年齢層や性別などは、どんな方が多いのでしょうか?

市居 :シドニーのときは大学生などの若い方と仕事をリタイアされた年配の方が多かったですね。アテネのときは、ヨーロッパは長期休暇をとりやすいということもあって、30代、40代の方が他の国からも来ていましたね。

新条 :リオでは女性の方が多かったと思います。私自身も街を歩いているときに、どっちに行けばいいかなと思っていると、女性ボランティアの方が駆け寄って声をかけてくれましたね。ブラジル人は英語が話せる人が1割ぐらいしかいないので、コミュニケーションはほとんどポルトガル語。私はポルトガル語はあまりできないので、ちゃんとはわからないんですけど、人間だから何となく通じるじゃないですか。何よりも、そうやって話をすることで、すごく楽しい気持ちになれるんですよね。

市居 :本当にそう! ムスッとしている正しい英語を話せる人よりも、英語はあまりうまく話せないとしても親身になって相手のことを考えてくれる人のほうが、絶対にボランティアには向いているんじゃないかなと思います。

次回、「ボランティアだから味わえること!」に続く